座禅に効果はあるのか|「求めない」から得られる変化と科学的根拠

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「座禅に本当に効果はあるのか」と検索してここに辿り着いた方は、どこかで一度は「坐禅は心身にいい」と聞いたことがあるのかもしれません。

この記事では、実感・科学で確認されていること・デメリットの3つから、できるだけ正直に書きます。読み終わったころには、ご自分にとって坐禅がどういう距離感の実践になりそうか、少し輪郭が見えるはずです。

この記事でわかること
  • 「坐禅は効果を求めて行うものではない」という逆説の意味
  • たまに家で坐るだけでも感じる、実感レベルの小さな変化
  • 有田秀穂医師の研究で確認されている生理学的な変化
  • 足の痛みや続けにくさなどのデメリットと、その付き合い方
  • 初心者からよく聞かれる5つの疑問への答え
目次

まず正直に。坐禅は「効果を求めて」するものではないという話

実は坐禅(ざぜん)というのは、本来「効果を求めて」するものではない、という考え方が仏教のなかにあります。

曹洞宗をひらいた道元禅師は、ただ坐ることそのものが大事だと繰り返し説きました。「只管打坐(しかんたざ)」という言葉があって、これは「ただひたすら坐る」という意味です。

坐ることで何かを得ようとか、何かに到達しようとか、そういう目的を置かずにただ坐る。それが坐禅だ、というわけです。

「じゃあ効果なんて書くなよ」と思われるかもしれません。ただ、ここにひとつの逆説があります。

求めないからこそ、結果としてあらわれる変化があるということです。

走る人が「痩せたい」と思って走り続けると苦しくなる一方で、「ただ走るのが気持ちいい」と思って走っている人のほうが、長く続いて結果として健康になっている。それに近い話かもしれません。

この記事では、その「結果としてあらわれる変化」について、できるだけ誇張せずに書きたいと思っています。効果を断言する情報もありますが、坐禅というのはそういう書き方と少し相性が悪い気がしているので正直に書きます。

なお、「座禅」と書かれることもありますが、本来は屋根(まだれ)のつかない「坐禅」が正しい表記です。この記事でも以降、「坐禅」で通します。

たまに坐るわたしが感じた、小さな変化

ここからは、写経のかたわら家でたまに坐ってきたわたしが、実際に感じた変化を書いていきます。

体系的に毎日坐っているわけではありません。仕事の合間や子どもが学校に行っているあいだに、ほんの5分か10分、机の横の坐蒲(ざふ)に坐る、というくらいの関わり方です。そんな感じの実践でも、「ああ、これは坐る前と違うな」と感じることは、あります。

呼吸がゆっくりになる感じ

一番わかりやすいのは、呼吸ですね。坐る前は気づかないのですが、パソコンに向かっているときの呼吸は、自分が思っているより浅くて速いもの。

坐って呼吸に意識を向けるだけで、ひと息ひと息が長くなっていきます。5分経つころには、息が自分の体の奥のほうまで届いている感覚になることがあります。これだけで、肩の力がすっと抜けていくのがわかります。

頭の中のノイズが少し静かになる感じ

坐っているあいだ、頭のなかは実はずっとざわざわしています。「あの返信、まだしていない」「夕飯どうしよう」「さっきの打ち合わせで言い忘れたこと」。雑念をなくそうとしても、思考は止まりません。

ただ、面白いのは、坐っているうちに、それが「流れていくもの」として見えるようになってくる瞬間があることです。完全に静まることはいつもではないのですが、それでも坐ったあとはいつもより頭のなかが整理された感じがします。

小さなことで苛立ちにくくなる感じ

これは長いスパンでぼんやり感じていることですが、坐禅をした日はそうでない日より、小さなことにイラッとする回数が少ない気がします。正直私が実感として感じている効果の中で一番大きなものはこれですね。小さな子供もいて、つい怒りたくなるようなシーンがまだまだありますので…。

子どもが何度も同じことをしつこく聞いてくるだとか、言ったことをやめてくれない時だとか、夫の言葉が引っかかったときとか(笑)。同じ場面で、反応がほんの少しだけ柔らかくなる感じです。「坐禅のおかげで全然怒らなくなった」とは言いません。そんなに単純ではないので。日常にはイライラごとも多い。ただ、ほんの少し、冷静に、距離が取れる感じはあります。

落ち着いた日常を送りたいと思っている、日々忙しくされている方はとても多いと多います。そんな人には、ぜひお家で坐禅をやってみてほしいです。

自分の感情と距離が取れる感じ

苛立ちの話にほぼ近いのですが、もう少し広く言うと、自分の感情と少し距離を取れる感覚があります。不安が湧いてきたときに、その不安に丸ごと飲み込まれるのではなく、「ああ、いま不安があるな」と一歩引いて見られる。これは、わたしにとっては坐禅から受けたもう一つのプレゼントかもしれません。

坐禅の変化は、「100から120に集中力が上がった」みたいに数字で測れるものではありません。「たしかにちょっと違うな」くらいの、ささやかな変化の積み重ねです。

家でたまに坐るなら、坐蒲(坐禅布団)がひとつあると続けやすくなります。床に直接坐るより姿勢が安定しますし、「坐るための場所」が家にあること自体が実践のきっかけになります。何より、気分が出ます。わたしは仕事机の横に置いています。坐蒲の選び方については 坐蒲の選び方の記事 にもまとめています。

私が使っているのもこちらです。

蓮見あおいが実際に家でつかっている坐蒲
坐蒲(ざふ)

わたしが使っている曹洞宗仕様の坐蒲『ツムギ』

3,960円。モスグリーンの落ち着いた色合いで、部屋に置いても浮きません。直径35cm前後の標準サイズで、結跏趺坐でも半跏趺坐でも安定します。坐禅初心者の一つ目の坐蒲としておすすめしたい一品。

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坐蒲の選び方については 坐蒲の選び方の記事 にもまとめています。

科学でどこまでわかっているか

ここからは、坐禅が体や心に与える影響について、研究でどこまで確認されているかを整理します。

ただ、最初に釘を刺しておきたいのは、「坐禅をすれば〇〇が治る」と断言できる段階の研究は、まだそれほど多くないということです。あくまで「〜という変化が報告されている」レベルの話として参考までに読んでください。

セロトニン神経の活性化

坐禅と脳の関係でよく取りだたされるのが、セロトニンという神経伝達物質です。みなさんも聞いたことはありますよね?セロトニンは精神の安定や睡眠の質にかかわる物質で、「幸せホルモン」なんて呼ばれることもあります。

調べてみたところ、東邦大学名誉教授の有田秀穂医師は、坐禅の呼吸法(丹田(たんでん)呼吸法)とセロトニン神経の関係を長年研究してきた第一人者です。有田医師の2012年の論文(『臨床神経学』52巻11号)では、健康な成人15名に20分間の丹田呼吸法を実施してもらい、全血中のセロトニン濃度が有意に増加したことが報告されています。

ここでひとつポイントなのは、「坐禅に長年慣れた人」ではなく「初心者」でもこの変化が起きたという点です。つまり、長年続けないと何も起きないというものではなく、短時間でも一定の生理学的な変化があることを示しています。

前頭前野の血流変化と脳波の変化

同じ研究では、専用の機器で脳の血流を測定しています。前頭前野(ぜんとうぜんや。脳の前の部分で、判断や集中に関わる領域)の酸素化ヘモグロビンレベルが、丹田呼吸法中に有意に増加したと報告されています。

また脳波(EEG)では、α(アルファ)帯域の活動が増加し、θ(シータ)帯域の活動が減少することも確認されています。そしてこの脳波の変化は、先ほどのセロトニン濃度の増加と相関していました。

ざっくり言うとと、「丹田呼吸法をすると、前頭前野が働き、セロトニンが増え、脳波が落ち着いた方向に動き、気分のネガティブさが少し減る」こういった複数の変化が、ひとつの実験で同時に観察された、ということになります。

マインドフルネス研究の位置づけ

坐禅の効果を語る文脈で、マインドフルネス瞑想の研究が引用されることもあります。マインドフルネス瞑想を8週間続けた人の脳の構造に変化が出たという研究や、扁桃体(へんとうたい。感情、とくに恐怖や不安に関わる領域)の活動が低下したという報告もあります。

ただ、マインドフルネスと坐禅は「近い実践」ではあるものの、厳密にはちがう実践です。目的の置き方もちがいますし、やり方もイコールではありません。

ですので、「マインドフルネスで〇〇な結果が出ている → だから坐禅でも同じ効果がある」と断言するのは、少し慎重になったほうがいいと思います。似ている領域の研究として、参考情報くらいに捉えておくのが良いのではないでしょうか。坐禅と瞑想・マインドフルネスのちがいについては 別記事 でも整理しています。

効果を求めすぎない方が、長く続く

ここまでいくつか効果について取り上げてきましたが、どれも「〜という変化が観察された」「〜という傾向が示された」のレベルです。

過大に期待するよりも、「そういう傾向がある実践なんだな」くらいで受け取るほうが、結局は長く続くのではないかと思っています。

そもそもに立ち返ると、坐禅は無目的に行うものです。座ることそのものに集中することが、結果的に多くの効果をもたらすのかもしれませんね。

デメリットも正直に書いておく

ここまで変化の話をしてきましたが、坐禅にはデメリット、というより「向き合うときに大変な部分」があります。ここについても一応きちんと書いておきます。

足が痛い

単純ですが、本当です。最大の壁はおそらくこれです。結跏趺坐(けっかふざ)や半跏趺坐(はんかふざ)で足を組むと、慣れないうちはかなり痛いです。最初から痛くて、5分も保たないうちに痛くなります。私もそうでした。

対処法はいくつかあります。

  • 初心者はまずあぐら坐りから始める
  • 坐蒲を使って、お尻の位置を少し高くする(これだけで全然楽になります。坐蒲は必須)
  • 何度かやっていれば、慣れてくる
  • それでも痛ければ坐禅椅子を使う

とくに坐禅椅子を使うことは、正式な作法の場でも許容されているので、「足が組めないから坐禅はできない」と思い込まないでいただきたいところです。詳しい姿勢の作り方は 坐禅のやり方完全ガイド に書いています。

短時間でも意外と難しい

「ほんの5分」と言われても、やってみるとわかるのですが、5分のあいだ「ただ坐る」というのは、案外難しいものです。

思考は勝手に動き続けます。「これ意味あるのかな」「時計見たいな」「そもそも正しく坐れてるのかな」「なんか音がするな」。こういう心のノイズが絶えずとやってきます。これは慣れの問題もあるので、最初のうちは「こんなものか」と受け流してください。数をこなすうちに、頭のなかが散らかるのを観察するような感覚になってきます。

「すぐに効果」は感じにくい

これが、冒頭の逆説につながる話です。

坐禅を1回したからストレスが消えるとか、1週間続けたから劇的に集中力が上がる、ということはほとんどありません。じわじわと「あれ、少し違うな」という変化がくるタイプの実践です。

短期的に結果を求める現代的な考え方とは、正直あまり相性がよくありません。逆に、「効果のために」というモードを一度外せたとき、かえって続けやすくなる気がします。

それでも坐る価値はあるのか

ここまで読んで、「なんだかめんどくさそうだな」と感じた方もいるかもしれません。効果は断言できない、足は痛い、すぐには結果が出ない。たしかに、そういう実践です。

でも、わたしはこう思っています。

「効果のために坐る」という考え方でいると続かないけれど、「坐るために坐る」と思えたとき、続きやすくなる。そして結果として、何かが少しずつ変わっていく。

これが、冒頭で触れた只管打坐の逆説です。「効果を期待しすぎない人ほど、気づいたら変化している」。これは禅の皮肉であり、同時に、現代人がストレスから距離を取るためのヒントでもあると思っています。何事もそうかなと思います。

家で坐るのがなかなか続かないと感じる方は、一度お寺の坐禅会に行ってみるのも手です。

お寺の空気感は家とはまったく違います。僧侶の方に導かれて、ほかの参加者と一緒に坐る時間は、独特の集中感があります。わたし自身、結婚前に宿坊に泊まっていたりもしたので、坐禅を体験したことが何度か。いまでも自宅で坐るときの原点になっています。

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よくある質問

最後に、坐禅の効果についてよく聞かれる質問にお答えします。

Q1. 何分坐れば効果を感じられますか?

はっきりした基準はありませんが、まずは5分から始めるのがおすすめです。先ほどご紹介した有田秀穂医師の研究では、20分間の丹田呼吸法で血中セロトニン濃度の変化が確認されていますが、これは「実験的な条件で計測した結果」であって、「20分未満は無意味」という意味ではありません。ご自分の生活リズムのなかで、無理なく続けられる時間から始めてみてください。

Q2. 毎日やらないと意味がないですか?

毎日でなくても大丈夫です。わたし自身、毎日坐っているわけではありません。気が向いたときにほんの5分、というペースです。それでも、「坐った日」と「坐らない日」の違いは、自分のなかで少しずつ見えてきます。「続けなければ」と気負うと、かえって離れていきやすいタイプの実践だと思っています。

Q3. 初心者でも変化を感じられますか?

感じられる方もいれば、最初は「何も変わらない」と感じる方もいます。呼吸が深くなる感覚は初回から気づく方が多いですが、「感情と距離が取れる」ような変化は、しばらく続けた人のほうが気づきやすいかもしれません。期待しすぎず、ゆっくり向き合ってみてください。

Q4. 瞑想やマインドフルネスと効果は同じですか?

完全に同じではありません。坐禅は「何かのために坐るのではなく、ただ坐る」という姿勢を大切にする実践です。対して、マインドフルネスは「今ここに注意を向けるトレーニング」として、ストレス軽減や集中力向上などの目的意識を持って実践されることが多いです。結果として似た変化が起きることもありますが、出発点の思想がちがうので、同じものとはみなしにくいと思います。

Q5. 効果を感じにくいときはどうすればいいですか?

そういうときは、「効果を感じよう」としている自分を一度手放してみてください。矛盾するようですが、効果を求めて坐れば坐るほど、焦りのほうが強くなってしまいます。「今日の5分は、ただの5分」と思って坐るだけで十分です。

まとめ:「効果のために」ではなく「坐るために」坐る

この記事でお伝えしてきたことを、最後に整理します。

  • 坐禅は本来、効果を求めて行うものではないが、結果としてあらわれる変化はある
  • 呼吸・感情との距離・頭のノイズの減少など、日常の感覚レベルで気づく変化が多い
  • 科学的には、有田秀穂医師の研究で前頭前野の血流増加、脳波の変化、血中セロトニンの増加が報告されている
  • デメリットは足の痛み・短時間でも難しいこと・すぐに効果を感じにくいこと
  • 「効果のために」ではなく「坐るために」坐るほうが、結果的には続きやすい

もし坐禅を始めてみようと思われたら、まずは 坐禅とはの基礎記事 か、坐禅のやり方完全ガイド から読んでみてください。姿勢や呼吸の基本がわかると、家で5分坐るだけでもだいぶ感覚が違ってきます。

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この記事を書いた人

奈良出身・東京在住。IT企業でリモートワーク中心に働きながら、写経を5年以上続けています。写経会や宿坊の朝のお勤めで少しずつ坐禅に触れる機会があって、最近は家で気が向いたときに5〜10分だけ坐っています。「日課」と呼べるほど続けているわけではないけれど、そのくらいの距離感だからこそ書けることもあるかな、と思っています。
このサイトでは、自分が体験したこと・丁寧に調べたお寺の情報・続けるためのちょっとしたコツを、手帖を見せるように書き留めています。

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