曹洞宗と臨済宗の違い|坐禅作法・公案・主要寺院まで解説

坐禅をする人のイメージ

坐禅を始めた人の中には、「曹洞宗と臨済宗って何が違うの?」という疑問が出てきた方もいるかもしれません。

永平寺は「曹洞宗」で、建長寺・円覚寺は「臨済宗」。同じ「禅宗」なのに、壁に向かって坐るお寺と人に向かって坐るお寺がある。

坐禅を体験しに行く前に、こうした違いを知っておくと、現地でのお作法がわかりやすくなったり、なるほどなと腑に落ちることもあります。

この記事では、曹洞宗と臨済宗の違いを、坐禅の作法・教えの違い・主要寺院まで整理しました。難しい教義の話はできるだけ省いて、坐禅を実践する人に必要な情報に絞ってお伝えします。

この記事でわかること
  • 曹洞宗と臨済宗の違いを一覧比較
  • 坐禅の向き・只管打坐と公案・警策の作法の違い
  • 日本への伝来(栄西と道元)の違い
  • 大本山・主要寺院の一覧
目次

一目でわかる比較表

まずは、表にざっくりまとめますね。

曹洞宗臨済宗
日本の開祖道元禅師(1200〜1253)栄西禅師(1141〜1215)
もう一人の祖瑩山禅師(太祖・總持寺開山)
道元禅師とあわせて「両祖」
白隠禅師(江戸期の中興の祖)
現在の臨済禅は「白隠禅」とも
大本山2つだけ。
永平寺(福井)・總持寺(横浜)
各派の本山14つ。
妙心寺派 / 建長寺派 / 円覚寺派など14派
坐禅の向き壁に向かって坐る(面壁・向壁)中心に向かって坐る(向外)
坐禅の方法只管打坐(しかんたざ)・黙照禅公案禅(看話禅)
警策の作法合掌=「打ってください」の意合掌=「打ってください」の意
寺院数約14,700ヶ寺約5,700ヶ寺(14派合計)
信者数目安約800万人約100万人
代表的な坐禅体験スポット永平寺・總持寺・各地の曹洞宗寺院建長寺・円覚寺・妙心寺・勝林寺など

坐禅の方法の違い・ここが実践上の核心

向壁(曹洞宗)と向外(臨済宗)・坐る向きの違い

坐禅会に参加したとき、最もわかりやすい違いがこれです。

曹洞宗では壁に向かって坐る(面壁・向壁)。
臨済宗では中心に向かって坐る(向外)。

ただし、臨済宗の大本山・円覚寺のブログを拝聴するとこんな記述がありました。

「近年の研究では、臨済宗でももともとは壁に向かって坐っていたのでしたが、江戸期になって今のような形になったようなのです。」

円覚寺ブログラジオ「臨済宗と曹洞宗の違い」2022年7月2日

臨済宗でももともとは壁に向かって坐っていたが、江戸期に黄檗の影響を受けて今のような形になったと指摘されています。

つまり向きの違いは歴史的な変化の結果であり、本質的な違いは坐禅の方法にあるのかもしれません。

只管打坐(曹洞宗)と公案禅(臨済宗)・これが本質的な違い

考え方の違いを比べてみます。

曹洞宗:只管打坐(しかんたざ)・黙照禅(もくしょうぜん)

「只管」はひたすら、「打坐」は坐ること、という意味です。つまりただひたすらに坐ることが修行であり、悟りである。何かを考えたり、目的をもったり、課題に取り組んだりするのではなく、ただ坐ること自体が完全な修行であると。道元禅師の「修証一等(修行と悟りは一つである)」という思想が根底にあります。

臨済宗:公案禅(看話禅・かんなぜん)

師から与えられた「公案(こうあん・禅における問題、課題)」に取り組むことで悟りに近づくという修行です。たとえば有名な公案に「隻手の声(せきしゅのこえ)」があります。「両手を打てば音がする。片手の音を聞け」というもので、論理では答えの出ない問いに全身で向き合うことが修行であると。

公案は1,700以上あるとされ、師匠が弟子の境地に合わせて課題を変えていきます。「話頭(わとう)」と呼ばれる公案の核心部分を坐禅中に工夫し続けることが、臨済宗の坐禅の核心です。

この違いを中国・宋時代の名称で表現すると、曹洞宗=黙照禅(默って照らす禅)、臨済宗=看話禅(話頭=公案を看る禅)となるそうです。

目的というか(正確に言うと曹洞宗は目的を持たない)、出発点がそもそも違うということなのですね。

警策の作法は?細かい違いはあるが「合掌=受警」は共通

坐禅中に巡回する僧侶が持つ警策(きょうさく)は、背中や肩を打つことで気持ちを引き締める道具です。両宗派ともに警策を使い、合掌で「打ってください」の合図という点は共通しています。

一応細かい違いを挙げると:

曹洞宗臨済宗
読み方きょうさく(呉音)けいさく(漢音)
打つ場所右肩のみ1打(左肩には袈裟がかかるため打たない)左右の肩を2〜4打ずつ
巡回方向背後から正面から(坐禅者が前傾して背中を出す)
合掌の意味「打ってください」(受警の合図)「打ってください」(受警の合図)

※私の文献でのリサーチで、全ての寺院を実際に調べたわけではないので、現代の実態と異なる寺院もあるかもしれません。ご了承ください。


曹洞宗とはどんな宗派か

ここまで違いを見てきましたが、それぞれの宗派そのものについても、坐禅に関わる範囲で整理しておきます。まず曹洞宗から。

宗名曹洞宗(そうとうしゅう)
両祖道元禅師(高祖)と瑩山禅師(太祖)のお二方
大本山永平寺(福井)・總持寺(横浜)の両大本山
本尊釈迦牟尼仏
依りどころ坐禅の教え。坐禅で得る身と心のやすらぎが、そのまま「仏の姿」
主な経典『修証義』『般若心経』など
寺院数約14,700ヶ寺(分派がなく、単一の組織)

「宗祖が二人いる」のが曹洞宗の特徴

比較表では日本の開祖を道元禅師と書きましたが、正確に言うと少し違います。曹洞宗には宗祖が二人います。

曹洞宗の公式サイトにはこう書かれています。鎌倉時代に道元禅師が正伝の仏法を中国から日本に伝え、瑩山禅師(けいざんぜんじ)が全国に広め、曹洞宗の礎を築いた、と。このお二方を両祖大師(りょうそだいし)と呼びます。

永平寺は道元禅師が開かれ、總持寺は瑩山禅師が開かれました。大本山が2つあるのは、宗祖が2人いるからなんですね。臨済宗が14派それぞれに本山を持つのとは、まったく違う理由で複数になっているわけです。

道元禅師が深山で厳格に修行の道を示した方だとすれば、瑩山禅師は各地に教えを広げた方。この二人の性格の違いが、そのまま曹洞宗の幅になっていると言われることもあります。曹洞宗が日本でいちばん寺院数の多い禅宗になったのは、瑩山禅師以降の展開があったからです。

坐禅だけが修行ではない

もうひとつ、坐禅を実践する立場から知っておくといいことがあります。曹洞宗は「修行の根幹は坐禅」としながら、日常生活の一つひとつを、感謝と喜びの心で、瞬間瞬間をていねいに実践し続けることを修行と捉えていると公式に示しています。

坐禅会に行くと掃除(作務)や食事の作法まで含まれていることが多いのは、このためです。「坐っている時間だけが修行ではない」という考え方は、家で坐る人にとってもけっこう効いてきます。坐蒲を片づけるところまでが坐禅、と思うと日常の見え方が少し変わります。

臨済宗とはどんな宗派か

続いて臨済宗です。こちらは曹洞宗とかなり性格が違います。

宗名臨済宗(りんざいしゅう)
宗祖臨済義玄禅師(中国・唐)/日本へは栄西禅師が伝える
中興の祖白隠禅師(江戸時代)。現在の臨済禅は「白隠禅」とも
本山14派それぞれに本山(妙心寺・建仁寺・南禅寺など)
本尊特定の本尊を定めない。釈迦牟尼仏を大恩教主と仰ぐ
経典特定の経典を定めない。『般若心経』『観音経』『白隠禅師坐禅和讃』などを読む
目指すもの本来そなわる仏性を、坐禅・公案・読経・作務を通して自覚する(見性)

本尊も経典も「定めない」宗派

臨済宗を調べていて驚いたのが、ここです。臨済宗は、特定の本尊も特定の経典も定めていません。

南禅寺の公式サイトには、その理由がはっきり書かれています。「不立文字・教外別伝」——教えの外に、体験によって別に伝えるものこそ禅の真髄である。だからお経の文字を離れて、ひたすら坐禅によって悟りを得なさいという立場をとる。ゆえに特定の経典を定めていない、と。

本尊も同じ考え方です。釈迦牟尼仏を大恩教主と仰ぎながら、仏性は自分の内にあるものだから、寺ごとに釈迦如来・薬師如来・観世音菩薩などさまざまな仏さまを祀っています。「決めない」ということを積極的に選んでいる宗派だと言えます。

ただし、経典を軽んじているわけではありません。実際の坐禅会では『般若心経』や『白隠禅師坐禅和讃』が唱えられます。南禅寺の説明にはこうもあります——姿勢を正し、精神を統一し、清浄な心で一心にお経を読んだり、経文を一字ずつていねいに写したりするのも坐禅である、と。読経も写経も坐禅のうち、というわけです。

なぜ14派に分かれているのか

曹洞宗に分派がなく単一の組織であるのに対して、臨済宗は14の派に分かれ、それぞれが独立した本山を持っています。妙心寺派、建仁寺派、南禅寺派、建長寺派……という具合です。

これは「分裂した」というより、もともと一つにまとまる仕組みを持たなかったという理解のほうが近いようです。臨済宗は室町幕府に保護され、五山十刹という寺格の制度のもとで、それぞれの大寺がそれぞれの法系を伝えてきました。そのまま近代を迎えて、いまの14派になっています。

坐禅体験をする側にとって、これはけっこう実際的な意味を持ちます。「臨済宗の坐禅会」とひとくくりにできないということだからです。同じ臨済宗でも、妙心寺と南禅寺と建仁寺では会の形も料金も参加条件も違う。行きたいお寺を個別に調べる必要があります。

歴史的背景を整理・中国で同時期に生まれた兄弟宗派

曹洞宗も臨済宗も、源流は同じ「禅宗」にあります。

中国の禅宗の歴史から簡潔に整理します。

禅宗とはインドから中国に仏教を伝えた達磨大師(5〜6世紀)を始祖とし、六祖・慧能(えのう、638〜713)の時代に中国で大きく開花します。慧能の弟子たちがそれぞれの禅風を展開し、やがて「五家七宗」と呼ばれる複数の流派に分かれました。

曹洞宗は洞山良价(807〜869)と曹山本寂(840〜901)が開きました。二人の名前「洞山」と「曹山」から「曹洞」の名がついています。

臨済宗は義玄禅師(?〜867)が中国・唐の時代に開いた宗派です。鋭い問答と棒打ちで知られる禅風で、後に「臨済宗」と総称されました。

同じ時代に中国で成立した、祖を同じとすると言う点で、いわば「兄弟宗派」とも言えるかもしれません。

日本への伝来・栄西と道元

それぞれ、中国から日本へ伝わった由来です。

曹洞宗は道元禅師(1200〜1253)が入宋して如浄禅師に師事し、帰国後に日本に伝えました。京都に興聖寺(1233年)を開いた後、越前(現・福井県)に永平寺(1244年)を建立。権力・名利から距離を置き、深山幽谷で修行することを重んじた道元の姿勢は、曹洞宗の性格に受け継がれています。

臨済宗は栄西禅師(1141〜1215)が鎌倉時代に日本に伝えました。2度の入宋を経て帰国し、博多に聖福寺(1195年)、京都に建仁寺(1202年)を開きました。鎌倉幕府の支持も受け、武家社会と結びついて広まったそうです。臨済宗は後に14の派に分かれ、それぞれが独立した本山を持っているのも特徴です。


大本山・主要寺院の一覧

曹洞宗と臨済宗それぞれの大本山を整理します。

曹洞宗の大本山

曹洞宗には2つの大本山があります。

永平寺(福井県永平寺町)道元禅師が永平寺の前身となる大仏寺を1244年に建立(1246年に永平寺と改称)。修行の根本道場。今でも約100名超の修行僧が生活。日帰り参禅・一泊二日参禅体験あり・隣接の宿坊も
總持寺(神奈川県横浜市鶴見区)永平寺と並ぶ大本山。鶴見駅から徒歩7分。月例参禅会あり・当日参加可

臨済宗14派と主要本山

臨済宗は現在14の宗派(派)に分かれており、それぞれが独立した本山を持っています。

宗派本山所在地
妙心寺派(最大)妙心寺京都市右京区
相国寺派相国寺京都市上京区
建仁寺派建仁寺京都市東山区
東福寺派東福寺京都市東山区
南禅寺派南禅寺京都市左京区
大徳寺派大徳寺京都市北区
天龍寺派天龍寺京都市右京区
建長寺派建長寺神奈川県鎌倉市
円覚寺派円覚寺神奈川県鎌倉市
方広寺派方広寺静岡県浜松市
永源寺派永源寺滋賀県東近江市
向嶽寺派向嶽寺山梨県甲州市
国泰寺派国泰寺富山県高岡市
佛通寺派佛通寺広島県三原市

最大派は妙心寺派、全国の臨済宗寺院の約6割を占めます。京都には多くの臨済宗の本山が集中していますね。ちなみに、鎌倉五山(建長寺・円覚寺・寿福寺・浄智寺・浄妙寺)と呼ばれるお寺はすべて臨済宗です。


坐禅体験の視点から・どちらが自分に合う?

教義の違いを理解したうえで、坐禅体験という実践的な視点から少し整理していみます。

一般の坐禅体験(観光・初心者向け)という意味では、どちらの宗派も初心者を受け入れているのでどちらでも問題ありません。そこまでやり方が明確に大きく違うということでもありません。

たとえば臨済宗では公案禅が出発点であるという話をしましたが、坐禅の時間に公案を与えられることは初心者向けの体験ではほぼなく、「ただ坐る」という点では曹洞宗と変わりません。

それでもあえて違いを挙げるとすれば、以下が参考になります。

曹洞宗臨済宗
坐禅中の過ごし方何も考えず、ただ坐ることを目指す初心者は数息観(呼吸を数える)が多い
体験のアクセス大本山は永平寺(福井)・總持寺(横浜鶴見)の2ヶ所のみ。都市部の曹洞宗寺院は少なめ京都・鎌倉に本山が集中。観光と組み合わせやすい
坐禅中の向き壁を向く(自分の内側に集中するイメージ)外を向く・中央を向く(開放感があるイメージ)
本格的に続けたい場合只管打坐をそのまま継続できる段階的な公案修行のシステムがある所も

正直言って「まず体験してみたい」段階では宗派の違いを意識する必要はありません。アクセスしやすい場所・開催曜日・料金で選ぶのが現実的です。坐禅を継続して深めていくなかで、自分がどちらの禅風に親しみを感じるかが自然にわかってくる人もいるかもしれませんね。

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よくある質問(FAQ)

Q. 曹洞宗と臨済宗、どちらの方が「正しい坐禅」ですか?

どちらが「正しい」ということはありません。同じ唐代に成立した別系統の禅宗で、どちらも坐禅を核心に置いています。只管打坐(曹洞宗)と公案禅(臨済宗)は、悟りへのアプローチが異なるだけで、どちらも深い修行の道です。

Q. 鎌倉五山はすべて臨済宗ですか?

はい。建長寺・円覚寺・寿福寺・浄智寺・浄妙寺の鎌倉五山はすべて臨済宗です。鎌倉は臨済宗の禅寺が集まるエリアです。曹洞宗の大本山は永平寺(福井)と總持寺(横浜・鶴見)にあります。

Q. 黄檗宗(おうばくしゅう)は臨済宗と曹洞宗のどちらですか?

どちらとも異なる、第3の禅宗です。江戸時代の1654年に来日した中国の隠元禅師が伝えた禅で、京都・宇治の万福寺(1661年開創)を大本山とします。当初は「臨済宗黄檗派」と称しましたが、明治9年(1876年)に「黄檗宗」として独立しました。坐禅の向きは臨済宗と同じ向外で、公案も用います。現在の禅宗三宗(曹洞宗・臨済宗・黄檗宗)のうち最も規模が小さい宗派です。

Q. 葬儀や法事の作法はどう違いますか?

坐禅の作法と比べると、葬儀・法事の作法の違いは細かい部分にとどまります。どちらも読経・焼香・位牌を用い、戒名(法名)をつける点では共通しています。自分が属する宗派によって読経する経典や作法が異なるため、菩提寺に確認するのが確実です。


まとめ

曹洞宗と臨済宗の違いを整理すると、実践上のポイントは3つです。

  • 坐禅の向き:曹洞宗は壁向き(面壁)、臨済宗は外向き(向外)
  • 坐禅の方法:曹洞宗は只管打坐(ただ坐る)、臨済宗は公案禅(禅問答に取り組む)
  • 警策の作法:どちらも合掌が「打ってください」の合図。読み方(きょうさく/けいさく)と打つ場所が違う

坐禅体験という意味では、どちらの宗派でも初心者を受け入れています。まずはアクセスしやすい場所に行ってみることが大切で、宗派の違いは体験を積んでから考えても遅くありません。

各宗派・各地域の坐禅体験スポットは以下の記事からどうぞ。

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この記事を書いた人

奈良出身・東京在住。IT企業でリモートワーク中心に働きながら、写経を5年以上続けています。写経会や宿坊の朝のお勤めで少しずつ坐禅に触れる機会があって、最近は家で気が向いたときに5〜10分だけ坐っています。「日課」と呼べるほど続けているわけではないけれど、そのくらいの距離感だからこそ書けることもあるかな、と思っています。
このサイトでは、自分が体験したこと・丁寧に調べたお寺の情報・続けるためのちょっとしたコツを、手帖を見せるように書き留めています。

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